夢の終わりに…
服従か?それとも闘争か?
ふと気づけば奴隷都市を見下ろせる小高い丘の上を走っていた、ソニアは自分がどの道をどうやって逃げたかほとんど覚えていなかった、何か大きな騒ぎが起こって番兵たちの姿が一人も見当たらなくなりあっさり脱出に成功したと言うことだけは覚えていた。

番兵たちの怒号に混じって剣と剣がぶつかり合うような音を聞いたような気もしたが彼女には何が起こったのか確かなコトは何もわからなかった。
奴隷都市
しばらく走り続けたところで今はもう誰も住んでいないレンガ造りの廃墟が見えて来る、そしてソニアが脱走したコトを知った番兵たちの追撃の足音も聞こえてきた!迫る蹄の音!

奴隷商人から高い給金を貰っていた傭兵たちはみな怒り狂っておりソニアを捕らえる気など毛頭なかった…手に持った槍で逃げるソニアの背中をひと突きにしようと馬を荒々しくムチ打ち全力で疾走して来る!
追撃者たち!
しかしソニアも小さなからだを素早くジグザグと左右に流すことで槍の一撃を上手くかいくぐり逃げ続ける、つい先ほどまで鎖つきで監禁されていたとは思えぬほど俊敏で見事な動きであった。

「あの建物の中に入れば!」

ソニアの中にかすかな希望が浮かびあがって来る、障害物のない場所では馬の足には到底かなわない、だが複雑で入り組んだ地形の中に入れば逃げ切れる可能性はあるのだ!そう思った瞬間ソニアの左の足首に激痛が走った!

ちょこまかと逃げ回るソニアに手を焼いた傭兵たちは馬を横一列に並べるとその手に持った槍を一斉にソニアに向け投げつけたのだった、たまらずその場に転倒するソニア、馬を降りて抜刀し追いすがる傭兵たち!
手槍の一撃!
己の背後に圧倒的な死の気配を感じながらもソニアの瞳の光は消えなかった、この絶望的な状況で彼女はまだ生きることを諦めてはいなかったのだ!

近場の地面に突き刺さった槍に手を伸ばす、、引き抜く、、ずしりと重たい鉄製の石突きがついた槍を傭兵たちに向け両手で構える、まぶたの奥から熱いものがこみ上げてくる、涙だった…ソニアは全身を小さくぶるりと震わせるとこう叫んだ!!
レッドソニア誕生の瞬間!
「我が名はソニア!偉大なる赤闘族の王の娘!ソニアだっ!」

その叫びは傭兵たちに向けて放たれたものではなかった、今から生きる為に武器を手にして闘うのだというその決意を何かわかりやすい形にしておきたいと思い他でもない自分に向けとっさに叫んでしまったのだ。

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